2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。
そんな謎に満ちた物語を彩るキャラクターたちを、キャスト陣はどのように演じたのでしょうか。
第19回目は、ラキオ役の七海ひろきさんにアフレコ現場でのエピソードや演技に込めた想いを伺いました。
原作やシナリオを読んだときの印象を教えてください。
七海ひろきさん(以下、七海)
オーディションの時点で、原作がゲームだということは調べて知っていたので、まずはプレイ動画を観て、作品の雰囲気をつかみました。ラキオ役が決まってからは実際にプレイも始めて……今も少しずつ進めているところなんです(※)。このインタビューが出る頃には、エンディングにたどり着いているといいなって(笑)。
原作ゲームは登場キャラクターが14人いるにもかかわらず、一人ひとりとの“出会い”がすごく新鮮で。「次はどんな人が現れるんだろう」って、ワクワクしながら進めていたのを覚えています。どのキャラも本当に個性が強くて、一瞬で心をつかまれるような登場の仕方をするんですよね。その感じをアニメでもちゃんと味わえるのが、この作品の魅力のひとつだなと思います。
(※)本インタビューはアフレコ期間中に実施
ラキオについて、最初はどんな印象を持たれましたか?
七海
第一印象は……「なんて派手な子なんだ!」と(笑)。ラキオは頭の装飾や服装のインパクトも強いし、登場した瞬間に目を引く存在ですよね。でも、台本を読んでいくと、見た目以上にクセが強くて。言葉遣いも独特で、「えっ、そんな言い方する!?」と驚かされるセリフばかり。これは一筋縄ではいかないな、と。
AnimeJapan 2025のステージでもお話ししたんですが、正直、最初の印象は「すごく嫌なやつだな」でした(笑)。ただ、演じていくうちに、「あ、ただ嫌なだけじゃないかもしれない」って少しずつ思えてきて。
回を追うごとに、ラキオの印象も変わっていきますよね。第17話までくると、「ラキオって、もしかしていいやつかも?」と思える瞬間もあって。
七海
そうなんです。最初は“感じの悪いキャラ”だと思っていたんですが、物語が進んでいくうちに、ちょっとしたギャップがどんどん見えてきて。
基本的にラキオって、誰に対しても態度が一貫しているんですよね。偉い人にも子どもにも、性別も関係なくフラットに接する。その姿勢って、一見すると冷たく感じるかもしれないけど、むしろ誠実さの表れなんじゃないかなと。それに、「言いにくいことをはっきり言える」強さがあって。そういうところに、ちょっと憧れますし、人間味もすごく感じました。
演技で意識したことや、音響監督とのやりとりで印象に残っていることはありますか?
七海
初回の頃は「もう少し意地悪に」「もっと強く」といったディレクションが多くて、演じ方のトーンを探る試行錯誤が続きました。私が少し柔らかくしてみたときには、「ちょっと優しすぎるかも」と調整が入ることもありました(笑)。
特にユーリとふたりきりのシーンでは、感情がにじみ出そうになる場面もあって、「そこはもう少し突き放してほしい」と言われることも。ただ私は、ラキオにも情があると思っているので、“出しすぎないけれど、確かにある”というさじ加減を見つけることが毎回の課題でした。
ラキオのセリフには、一言で相手を納得させるような強さがあって、夕里子とはまた違ったかたちで物語を引っ張っていますよね。
七海
そうなんですよね。私の中で特に印象に残っているのが、第17話での「簡単じゃないか」という一言です。悩んでいるユーリに対して、(ラキオが)さらっと言うんですが、それがただ冷たく突き放すのではなくて、どこかユーリに染み入るような響き方をするんです。
普段ずっと高圧的で、理屈っぽくて、あまり寄り添うタイプではないからこそ……あの静かな一言が逆にすごく心に残るというか。収録の前から「このシーンは丁寧に演じたい」と思っていましたし、個人的にもとても好きな場面ですね。
お気に入りのシーンや話数があれば教えてください。
七海
ユーリと沙明の“土下座”のくだりが好きです。あの空気感がなんとも絶妙で。重たい話し合いの中で、ちょっと笑ってしまうようなやりとりがあるのも、この作品の魅力だなと思います。
ラキオ以外で、特に気になったキャラクターや、印象に残っているキャラ同士の関係性があれば教えてください。
七海
本当にどのキャラクターにもギャップがあって、全員について語れるくらい濃密なんですよね。演じている皆さんの“ハマり方”も素晴らしくて、キャスティングの妙を感じました。
その中でも、私はやっぱり夕里子が好きです。あの圧倒的なカリスマ性と存在感に惹かれますし、強さの奥にふと垣間見える“隙”や“弱さ”のようなものにも心を動かされます。ラキオも夕里子も、感情をあまり表に出さないタイプなんですけど、だからこそ、にじみ出る人間味が印象に残りました。
もしご自身が『グノーシア』の世界にいたら、どんな立ち位置で動くと思いますか?
七海
うーん……実際にゲームをプレイしてみたときは、グノーシア側になるとすぐに疑われちゃって。だいたい2日目にはコールドスリープされてしまいまして。なので、エンジニアとか守護天使の方が、まだ勝率は高い気がします。あと、AC主義者はほんとに難しくて……私には務まりませんでした(笑)。
「このキャラが味方だったら心強い!」と思うのは?
七海
やっぱりセツと夕里子ですね。セツは信念を持っていて、仲間になると最後までちゃんと支えてくれる、すごく頼れる存在だと思います。夕里子は……もう、とにかく強すぎて(笑)。味方にいてくれたら心強いですし、何より敵には絶対に回したくないタイプですね。
今回、『グノーシア』の現場に参加して、刺激を受けた点を教えてください。
七海
本当にたくさんあります。たとえば、(しげみち役の)関さんのたった一言で空気をガラッと持っていくような存在感とか、(シピ役の)中村さんの掛け合いで感じた絶妙なテンポ感とか……。現場で見た、皆さんの演技の一つひとつがすごく刺激的でした。
その中でも特に印象的だったのが、スタッフさんたちの芝居に対する柔軟な姿勢です。通常の現場では、ラフの映像に声を合わせることが多いと思うんですが、今回の現場では「一度映像を切って、芝居を軸に組み立ててみよう」と提案してくださったことがあって。それがとても新鮮で、ありがたかったです。「もっと自由にやってください」と声をかけていただけたことで、自分もラキオとして、より自然体で臨もうと気持ちを切り替えることができました。
本作では“嘘をつく”“正体を隠す”といった、キャラクター自身も“演じる”シーンが多く描かれています。ご自身が役者として役を演じるうえで、大切にしていることを教えてください。
七海
「誰に届けるのか」を意識することです。舞台であれば客席にいるお客さま、アニメであれば画面の向こうの視聴者。どんなに自分が納得した芝居でも、伝わらなければ意味がないと思っていて、常に“届ける先”を感じながら演じるようにしています。
アニメのような映像作品に参加される際、舞台とは違って意識していることはありますか?
七海
アニメは、舞台と違って観る環境が本当にさまざまだと思うんです。電車で移動しながら観る方もいれば、家事の合間に観る方もいるだろうし、テレビの前でしっかり集中して観る方もいますよね。だからこそ、「もう一度観たいな」とか「もう一回聴いてみようかな」と思ってもらえるような芝居を届けたいなと、いつも意識しています。
完成した映像を観て、「この画だったら、もっとこうできたかも」と感じることももちろんあります。でも、そうやって芝居と映像が絶妙なバランスで重なって、“掛け算”で新しいものが生まれるのが、アニメならではの面白さだと思って日々演じています。
視聴者の皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。
七海
毎回シナリオを読むたびに「面白い!」と感じながら、アフレコも本当に楽しく取り組ませていただいています。原作チームの熱意と、アニメ制作陣の情熱がすごく伝わってくる現場で、その一体感のなかで芝居ができることがとても幸せです。
原作から触れてくださった方も、アニメから入ってくださった方も、それぞれの視点で楽しめる作品になっていると思います。ぜひ最後まで、見届けていただけたら嬉しいです。