2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。
そんな謎に満ちた物語を彩るキャラクターたちを、キャスト陣はどのように演じたのでしょうか。
第18回目は、夕里子役の悠木碧さんにアフレコ現場でのエピソードや演技に込めた想いを伺いました。
原作やシナリオを読んだときの印象を教えてください。
悠木碧さん(以下、悠木)
ゲームはプレイできていなかったのですが、台本を読みつつ情報を集めていく中で、「あ、これはすごく人気のある作品なんだな」とまず感じました。それと同時に、“人狼ゲーム”のような構造をベースにしていながら、他のSFとは少し違う『グノーシア』ならではの独特な世界観があって、とても惹きつけられました。
しかも物語がすごく緻密に構成されていて、ループを繰り返すなかで、キャラクター同士の関係性や親密度が少しずつ変化していく。その変化が真実につながっていく仕組みが、本当に面白かったです。構造だけでなく感情面でも丁寧に描かれていて、読みながらどんどん引き込まれていきました。
夕里子について、最初にどんな印象を持ちましたか?
悠木
「“様”付けで呼ばれているキャラクター」と聞いて、「圧の強い人だな」と(笑)。実際に調べてみたら、ファンの方の間でも“夕里子様”という呼び方が定着していて。言葉数は少ないのに、一言一言の密度がすごく高いんですよね。
なので、いわゆる“ドSっぽさ”みたいな印象は自然とついてくるのかなと思いつつ、本人はまったく意識していない。だからこそ生まれる“真のS感”みたいなものを意識して演じました。私自身は、夕里子が他のキャラクターたちを“生き物として見ていない”ような、少し距離のある視点を持っている気がしていて。その独特なまなざしを、声にも込められたらと思っていました。
演技で意識したことや、音響監督とのやり取りで印象に残っていることは?
悠木
現場では、「あまり大人っぽくしすぎないでください」と言われることが何度かありました。夕里子って、言動がすごく達観していて、つい“頭身の高いキャラ”みたいな雰囲気で演じたくなってしまうんです。でも、改めて原作のビジュアルを見ると、意外と輪郭が丸くて、少女らしさもちゃんとあるんですよね。だからこそ、どこか超越的な存在感を持ちながらも、ふとした瞬間に感じる“少女っぽさ”とのバランスを大事にしたいなと思いました。
あとは、「ラスボス感を出してください」みたいなディレクションもいただいて(笑)。そういうときは、“圧”を強めにしつつ、どこまでやっていいかを探りながら、楽しんで演じていました。
特に夕里子の場合、一言で空気を動かす場面としっかり掛け合う場面もありますよね。
悠木
そうですね。一言で成立する場面と、しっかりとやり取りがある場面では、“圧のかけ方”も少し違ってきます。でも、その変化も含めて演じていてとても楽しかったです。
夕里子以外で好きなキャラクター、もしくはキャラ同士の関係性などあれば教えてください。
悠木
好きな組み合わせは、たくさんあるのですが……。最近ChatGPTをよく使っているからか(笑)、レビがとても気になります。あの声でいつも穏やかに答えてくれるのが素敵で。ステラとレビが同じっていうのもSF感があっていいですよね。
お気に入りのシーンや話数があれば教えてください。
悠木
第12話でオトメがグノーシア化したとき、目がピカーンと光る演出があって。普段が可愛い分、あれは意外と怖かったです。歯も剥き出しで……ちょっとゾッとしました(笑)。
もしご自身が『グノーシア』の世界にいたら、どんな立ち位置で動くと思いますか?
悠木
グノーシア側だったら……「私は人間だ!」と思い込んで演じてしまえば、意外とバレずにやっていけるんじゃないかと思います(笑)。ただ、誰を排除するかの判断は本当に苦手で、たぶん仲間に相談しないと「え、なんでその人なの!?」って突っ込まれるタイプですね。
「このキャラが味方だったら心強い!」と思うのは?
悠木
やっぱり夕里子、かな。自分で言うのもなんですけど(笑)。あの威圧感というか、“場を掌握する力”みたいなものは、味方だったらかなり頼もしいと思います。ただそのぶん、議論に張り切って参加しすぎて、初手でコールドスリープされる可能性も高そうです(笑)。
今回、『グノーシア』の現場に参加して、刺激を受けた点を教えてください。
悠木
夕里子はセリフが少なくても強い存在感を放つキャラクターですが、この作品には、そんな“言葉に頼らずに個性を際立たせる”キャラが本当に多くて。それぞれの役者さんが、限られたセリフの中でどれだけ魅力や情報を込めるか、そのアプローチが多彩で、とても刺激を受けました。「このキャラはこうやって圧を出すんだ」とか、「リアクション、すご……」みたいに、収録を見ながら学ぶことも多かったです。
アフレコ以外の時間には、みなさんどんなお話をされていたのでしょう?
悠木
現場では、みんなで「ここでエンジニアがこの人を指名するのは…?」とか、「このタイミングで守護天使が守らないってどういうこと!?」と、その話数の議論の答え合わせで盛り上がったりもして(笑)。
あと、夕里子は真面目で凛としたキャラなので、待ち時間にはちょっといじられることもあって。「白い服だからカレーうどんは食べられない夕里子様」とか、「扇風機で粉が飛んじゃって信玄餅が食べられない夕里子様」とか(笑)。そういう“人間味のある夕里子様”も、実はちょっと見てみたいなと思ったりしました。
本作では“嘘をつく”“正体を隠す”といった、キャラクター自身も“演じる”シーンが多く描かれています。ご自身が役者として役を演じるうえで、大切にしていることを教えてください。
悠木
今回は、「演技をしているキャラクターをさらに演じる」という入れ子構造のような部分もあって、“演じる”とは何かを改めて考える機会になりました。特に登場人物が多い作品では、感情を出しすぎると他のキャラクターと役割がかぶってしまったり、物語全体のバランスを崩してしまったりすることもあって。だからこそ、「自分のキャラクターが何を担っているのか」「どのポジションに立つべきか」という視点は、常に意識するようにしています。
夕里子はまさにその典型で、“本心が見えない人”なんです。感情を抑えているというより、もっと深くて静かな場所に存在しているようなキャラクター。いわゆる“ヒロイン枠”や“ラブエンドのあるキャラ”ではないからこそ、どんな場面で存在感を出すか、逆にどこで引くかという線引きがとても重要でした。
キャラクターの物語における役割を認識するということでしょうか?
悠木
はい。夕里子の場合は、物語のキーパーソンとして“真相に触れる”場面を任されることが多いじゃないですか。そういうシーンでは台詞ひとつひとつを丁寧に届けることが求められる一方で、他の場面ではあえて感情を抑えて演じる必要もある。感情の起伏に巻き込まれる側ではなく、全体を俯瞰して動かしていく側のキャラクターなんですよね。
たとえばユーリのようなキャラは、感情を一緒に揺らすことで物語に深みが出るタイプ。でも夕里子の場合は、誰よりも落ち着いていて、場の空気を変えるタイミングを見極めて動く役割なんですよね。“感情のままに演じる”ことも重要ですが、“全体を見ながら感情を選び取る”お芝居も同じくらい大切にしています。
視聴者の皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。
悠木
サクッと見ても楽しめることは間違いないのですが、深く掘れば掘るほど味わいが増していくのが『グノーシア』だと思います。キャラごとに秘密や真実があり、それが積み重なっていくことで、どんどん新しい発見があるはず。ぜひご自身の好きなキャラを見つけて、一緒にこのループが導く先へたどり着いていただけたらと思います!