2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。
そんな謎に満ちた物語を彩るキャラクターたちを、キャスト陣はどのように演じたのでしょうか。
第16回目は、シピ役の中村悠一さんにアフレコ現場でのエピソードや演技に込めた想いを伺いました。
原作やシナリオに初めて触れたとき、どんな印象を持ちましたか?
中村悠一さん(以下、中村)
以前ゲームをプレイしていて、「人狼」に“ループ”を組み合わせた構造が新鮮でした。繰り返すたびにキャラクターや物語の核心に少しずつ迫っていく感覚があって、「これ、終わりはあるのか?」と考えさせられる作品でした。
最初は仕掛けそのものに惹かれましたが、続けるうちに「本質はキャラクターの内面や関係性にある」と感じられるところも面白いですよね。ループの中で少しずつ見えてくる変化や気づきこそが、この作品の面白さだと思います。アニメでも、心理戦の構造を丁寧に描きつつ、キャラの個性がしっかり活きていて。ゲームとは異なるアプローチながら、「こういう見せ方もあるんだ」と納得できました。
ゲームでは描かれなかった表現の部分で、アニメで期待したいと感じている部分があれば教えてください。
中村
たとえばゲームだと、“グノーシアにやられるとはどういうことなのか”が明確に描かれないんですよ。死ぬのか、喰われるのか。この取材を受けているタイミングではまだ映像が出来上がっていないので、その“行間”をアニメではどう表現するのかが楽しみです。ゲームを遊んでいる方にとっては、いろいろな部分で、映像だからこその新しい発見もあるんじゃないかなと思います。
演じているシピというキャラクターには、どんな印象を持ちましたか?
中村
第一印象としては、見た目のインパクトがすごいなと(笑)。ただ、中身はいたって真面目で、他のキャラのように強い癖があるわけでもなく、どちらかというと“常識人”に近いタイプです。ある意味では“地味”なキャラクターかもしれませんね。
演技で意識したことや、音響監督とのやりとりで印象に残っていることはありますか?
中村
アニメ化にあたって「肉体労働者らしいしっかりした体格で」とディレクションを受けて、“なるほど、そういう立ち位置の人だったのか”とあらためて腑に落ちた部分がありました。ゲームでは基本的にバストアップのイラストで表示されるので、体格や身のこなしといった部分はわからない部分も多く。
自分の中で、シピは繊細で静かな印象だったんですが、落ち着いた中に力強さもある男性像として、アニメでの表現に新たな解像度が加わった気がしています。
シピ以外で好きなキャラクター、もしくはキャラ同士の関係性などあれば教えてください。
中村
印象に残っているのは、しげみちですね。正体が全然わからないし、グノーシアより危ない“何か”の可能性もあるじゃないですか(笑)。アニメでも“風呂から上がるときだけタオルを巻いている”みたいな細かい違和感があって、「どういうこと!?」って思っています(笑)。
お気に入りのシーンや話数があれば教えてください。
中村
ジナがフォーカスされた、第12話が印象的でした。グノーシア探しが中心にある中で、ジナの心の内側にちゃんと触れていて、ドラマ性が強く出ていたと思います。ループという構造のなかで、記憶は消えてしまうけれど、今この一瞬にしかない心の交流が描かれていて、決して派手ではないけれど印象深い回でした。
もしご自身が『グノーシア』の世界にいたら、どんな立ち位置で動くと思いますか?
中村
僕は“とぼける”のが苦手で(笑)。疑われたときに、上手く取り繕える気がまったくしないんですよ。顔に出ちゃうというか。だから、たぶん僕が乗員だったら即バレしますね。
グノーシア側の役回りだったらいかがでしょう?
中村
確かに“あまり深く考えすぎなくていい”という意味では、(自分は)グノーシアの方が勝率は高いと思います。というのも、グノーシア側って、基本的には誰か一人を排除していくことが役目で、そこに強い動機があるわけではないんですよ。誰かを恨んでいるからとか、感情的な理由ではなく、ある種ランダムにターゲットを選んでいく。昼の議論でミスをしなければいいという構造なので、人間よりはいいかもしれないです。
「このキャラが味方だったら心強い!」と思うのは?
中村
しげみち以外なら、誰でも(笑)。余計なことまで白状しそうな気がするので。仲間としては、ちょっと不安かな。
今回、『グノーシア』の現場に参加して、特に刺激を受けた点があれば教えてください。
中村
全体的に、キャストに委ねられる部分の多い現場でした。キャラの方向性は共有されるものの、細かい芝居のニュアンスは自分で考えて組み立てていくスタイルで、ひとつひとつのセリフにどう感情を乗せるか、試行錯誤する場面が多かったです。
特に意識していたのは、「30分の中でドラマを成立させること」。ワンクール全体に起承転結があっても、週1で観る視聴者にとっては1話ごとの手応えが大事で。たとえ連続した話数でも、毎話に小さな“物語の芯”を作れているどうかは意識していました。
セリフと間合いの積み重ねで展開していく、『グノーシア』ならではの表現もありそうですね。
中村
そうですね。舞台が宇宙船の中という閉鎖空間なので、場所も動きもかなり制限されています。バトルがあるわけでもないし、作画的な派手さで押すタイプの作品でもない。だからこそ、会話の“空気”がすごく大事だと思っていて。
たとえば、「お前がグノーシアだ」と告発されて「はい」とあっさり認めてしまう。そんな静かなやり取りひとつ取っても、そこにどういう“怖さ”がにじむかが問われてくる。セリフの間やテンポ、トーンといった要素で、観ている人の不安をじわじわと積み重ねていくような、そんな演技が求められていると思いました。
本作では“嘘をつく”“正体を隠す”といった、キャラクター自身も“演じる”シーンが多く描かれています。ご自身が役者として役を演じるうえで、大切にしていることを教えてください。
中村
やっぱり「その気になること」ですね。たとえば、身長2メートルのゴリゴリのマッチョを演じるとしたら、自分が2メートルの体を持っていたらどう感じるか、どう話すかを想像してみる。「視線の高さは?」「重心の置き方や声の響き方は?」というように、身体性をちゃんと想像して入り込めるかが、演じるうえでの基礎だと思っています。
中村さんは、年齢も種族もさまざまなキャラクターを演じていらっしゃいますが、「これは演じにくいな」と感じる役もあるのでしょうか?
中村
物理的に“声が出ない”役はきついですね(笑)。たとえば「3歳の子どもを演じてください」って言われたら、気持ちでは寄り添えても、声帯の問題で無理なものは無理です。回想シーンとかで「一応やってみてください」って言われることもあるんですけど、「出ませんよ?」と内心思いながら演じています(笑)。
もちろん、自分の限界はありますけど、その中でベストの答えを出す努力はしています。難しいこともありますが、与えられたキャラクターに対して誠実に向き合うこと、それが一番大事だと思っています。
視聴者の皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。
中村
ちょうど物語が佳境に入ってきたところだと思います。これまで“1話完結”的なエピソードも多かったんですが、ここからは話が続いていく構成になっていて、役職も揃い、いよいよ“核心”に向かって動き出すタイミングです。
このアニメのゴールがどこにあるのか。ループからの脱出なのか。その先に何があるのか。僕自身も気になっていますし、ここからどう展開していくのかを、ぜひ最後まで見届けていただけたらと思います。