2025年10月11日より放送がスタートしたTVアニメ『グノーシア』。
舞台は宇宙を漂う一隻の宇宙船、星間航行船D.Q.O.。人間に擬態した未知の存在「グノーシア」を排除するため、乗員たちは毎日1人ずつ、話し合いと投票によって“疑わしき者”をコールドスリープさせていきます。
しかし、主人公・ユーリは、どんな選択をしても“1日目”に戻ってしまう——そんなタイムリープの渦中にいました。
極限状況の中で交わされる会話を通じて、少しずつ明かされていく乗員たちの本音や秘密。信じるべき相手は誰なのか。何が正しい選択なのか。繰り返されるループの先に待つものとは——。
そんな謎に満ちた物語を彩るキャラクターたちを、キャスト陣はどのように演じたのでしょうか。
第8回目は、レムナン役の大塚剛央さんにアフレコ現場でのエピソードや演技に込めた想いを伺いました。
原作やシナリオを読んだときの印象を教えてください。
大塚剛央(以下、大塚)
オーディションをきっかけにこの作品を知り、いろいろ調べていくうちに「これはすごく奥が深そうなゲームだな」と思いました。僕自身、普段からゲームはよく遊ぶほうですが、それでもかなり複雑そうだなという印象でした。
実際に出演が決まったときも、最初からシナリオやキャラクターの背景をすべて把握していたわけではなかったので、手探りで収録に臨んでいた感覚があります。僕が初めて(アフレコ収録で)録ったのは第7話だったのですが……ものすごいギャグ回だったんです(笑)。
前回の第7話では、伝説のゲーマー同士の対局にレムナンも興奮していました(笑)。
大塚
そうなんです(笑)。ギャグ多めの展開で、「あれ? こういうテンションの作品なんだ」と、驚きました。ですが、今回の第8話では一転してすごくシリアスな話になっていて……振れ幅の大きさに驚きましたし、そこがすごく魅力的でもあって。笑える回もあれば考えさせられる回もある。すごく間口の広い作品なんだな、と思いました。
レムナンについて、最初にどんな印象を持ちましたか?
大塚
台本を読んでみて、どこか人との距離感を保っている印象がありました。ただ、単なる人見知りというわけではなさそうだなと。何かを言うときに戸惑いがあったり、おどおどしていたりする。その一方で、時には怒ったりもします。そうした反応のひとつひとつに理由があることが、読み進めるうちに見えてきて、すごく繊細な人物だなと思いました。
この作品のキャラクターは全員そうですが、物語が進むにつれて少しずつ情報が明かされていき、印象が変わっていくんですよね。レムナンもそのひとりで、回を追うごとにどんどん見え方が変わっていく役だと感じました。
リレーインタビューの中で、SQ役の鬼頭さんも「レムナンの怯えがすごく良い」とおっしゃっていました。
大塚
ありがたいことに、現場で特に女性キャストの方々から「レムナンいいね!」と言っていただけることが多くて。すごく励みになりました。
演技で意識したことや、音響監督とのやりとりで印象に残っていることはありますか?
大塚
レムナンがどうやって言葉を発するのか、そのセリフの入り方には特に気をつけていました。台本に書かれていない部分のニュアンスも意識して、「この人なら、どういうタイミングで、どんなふうに言うだろう」と考えながら演じました。
第8話で、彼が自分の過去について語るシーンがあるのですが、そのときも音響監督から「もっと怯えていい」とディレクションをいただいて。かなり臆病な雰囲気を意識して演じました。ただ、それだけだと単調になってしまうので、その中にも“幅”や“ギャップ”を持たせられるように心がけました。
レムナン以外で好きなキャラクター、もしくはキャラ同士の関係性などあれば教えてください。
大塚
全員すごく個性的で(笑)。観ていて楽しいんですよね。ただ、僕が収録に参加していた回では、シピとの掛け合いがあまりなかったんです。なので、好きなキャラクターとは少し違うかもしれないのですが、中村さん演じるシピがどのようにグノーシアの世界に息づくのか、とても気になっています。
お気に入りのシーンや話数があれば教えてください。
大塚
印象的だったのは、やっぱり第7話ですね。アフレコに初めて参加した回だからということもありますが、しげみちとステラのやりとりが本当に面白くて。
もしご自身が『グノーシア』の世界にいたら、どんな立ち位置で動くと思いますか?
大塚
人狼ゲームをやったことはありますが、すごく神経を使うんですよね(笑)。あまり得意とは言えないかもしれません。自分からどんどん発言するタイプではないので、場を回すような役回りは苦手かもしれません……。むしろ、そういう人は最初に排除されがちですよね(笑)。
僕自身あまり先を読んで行動するタイプではないので、「こう言ったらこうなるだろう」という計算も苦手で……不用意な発言をしてしまいそうな気がします。なので、“留守番”がいちばん向いているのではないかなと思います(笑)。
「このキャラが味方だったら心強い!」と思うのは?
大塚
安心感という意味では、ステラでしょうか。彼女が近くにいてくれたら、それだけでも落ち着けそうな気がします。仮にグノーシアだったとしても、「まあ、襲われても仕方ないか」と思わせるような、不思議な包容力がありますよね。オトメもすごく可愛いのですが、あのテンションでずっと隣にいられると、少し落ち着かなくなってしまうかもしれません(笑)。
今回、『グノーシア』の現場に参加して、刺激を受けた点を教えてください。
大塚
原作チーム代表の川勝(徹)さんが、毎回アフレコ現場に来てくださっていて、その熱量が本当にすごかったんです。作品への思いや世界観を、キャストに対して丁寧に伝えてくださって。ときには、今では入手困難なグッズを持ってきてくださったりして、「グノーシア愛」がひしひしと伝わってきました。
それだけでなく、僕がアフレコに参加していない回でも、スタッフさんが「きっと参考になるから」と、わざわざ台本を用意してくださって。ふつう、そういった回の台本はもらえないことが多いので、とてもありがたかったです。最近では、劇伴のレコーディング映像を「よければ見てください」と共有してくださったこともありました。
もちろん、そこまでしない現場が愛に欠けているということではないですが、ここまで情熱を注いでくださる現場はなかなかないと思いますし、本当に貴重な体験でした。
本作では“嘘をつく”“正体を隠す”といった、キャラクター自身も“演じる”シーンが多く描かれています。ご自身が役者として役を演じるうえで、大切にしていることを教えてください。
大塚
これは、自分の中でもずっと考え続けているテーマです。なので、実は明確に言い切れないところがあって……。あえて言うなら、「その場にちゃんと存在すること」が、自分にとって理想の状態かもしれません。
なるほど。たとえば『グノーシア』の場合はどのような状態を指すのでしょう?
大塚
『グノーシア』で言えば、あの船の中に“レムナン”として確かに存在していて、彼の思考や視点から自然に言葉が出てくるような。台詞を言っているのではなく、その世界の中で本当に“生きている”と感じられる瞬間を目指して、演じるようにしています。
ただ、そういった感覚は明確な正解があるものではなくて。どれだけ深く考えていても、後になって「あれ、自分は何を考えていたんだっけ?」と曖昧になることもあります(笑)。それでも、そうやって模索しながら続けていくことが、自分にとっての“演じる”ということなのかなと思っています。
今年で声優を始めて10年になりますが、どの現場でも新しい発見や刺激があり、考え方も少しずつ変化してきた実感があります。きっと、来年また同じ質問をされたら、また違う答えをしている気がします。それくらい、終わりのない問いですね。
視聴者の皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。
大塚
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。第7話ではキャラクターたちがテンション高くはしゃいでいたかと思えば、第8話では一転して緊張感のある展開で……。作品全体としても、回ごとに雰囲気が大きく変わるのが『グノーシア』の面白さだと思います。興味を持ってくださった方は、ぜひ原作ゲームにも触れてみてください。そして、レムナンのことも引き続き、たくさん可愛がっていただけたら嬉しいです!